Rick

パーフェクトブルーのRickのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.5
 変化と成長とは、必ずしもイコールではない。だからと言って変化が全て悪いわけでもない。けれども身勝手なもので、変わる前と変わった後を天秤に掛け、やれ昔はよかった、今は昔ほど輝いていないなどと思ったり、言ったりしてしまう。おそらく「変わった」本人ですら、昔と今を比べてしまう。特に望む望まざるに拘らず、不特定多数から自分を常にジャッジし続けられる立場にいる人は。過去の自分のイメージや理想像が一人歩きしている中で、どれだけ自分の今いる、そしてこれから進む道を信じ、肯定できるのだろうか。自分で思っている以上に難しく、痛みを伴う道のりなのかもしれない。
 ネットというものが膨張的な成長を始め、ヲタク/アイドルの関係のあり方も徐々に変化しつつある1990年代末。アイドルはまだまだ馬鹿にされ忌み嫌われる業界でありながら、女優業もまた「体当たり演技」こそ本分であり一皮剥けるために必須であるとされている。ショービズ業界の醜悪さと下劣さと危険さの問題点だけでなく、ファンダムの暴走さえもこの時期にしっかりとサイコホラー・エンタメとして消化させている手腕にただ圧倒される。
 岩男潤子の素敵な声と凄まじい演技を堪能できる。
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