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パーフェクトブルーのちのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.7
想像より遥かに怖かった。しっかりR15やった。
始まるまでは何がR15なんかな〜?ちょっとグロいとか?とか思っとったけど、実際観たら多方面にしっかりR15でした。
途中でちゃんと食欲無くなった。

まず世界観の作り込み方に感服。凄いと思うところ山ほどあったけど、始まってから終わるまでの世界観・空気感が天才のそれやった。

音の使い方(大きさ、音楽の種類・コントラスト、タイミング、映像との合わせ方などなど)が映画始まってすぐからエンドロール終わるまでずっと効いとった。こだわりをめっちゃ感じた。
映画館で観たから余計そう感じられたんかも。音の大きさと太さ・重さで一気に世界に引き込まれた。
お化け屋敷的な意味ではなく、音でびびらせるのが上手すぎる。音ですごい怖くなった。すごい怖い感じの音やなあ、良いなあこれ、とか思っとったけど、同じような音が最後の方には内臓に不快感覚えるぐらい効いた。体の芯から怖かった。

話の構成(伏線の張り方・回収、話の展開の仕方、話のヒートアップの仕方、未麻の精神状態と話の進み方とのリンク、先の読めない展開(ずっとハラハラ)などなど)も本当に良くて、『なんて作り込まれて緻密な作品なんや』『これこそ映画芸術や』と心底思った。

映画全体を通していろんな表現が物凄く研ぎ澄まされとって大好きやった。音は前述やけど、いろんな角度からの怖さ(精神が潰されていく怖さ、業界の闇(主人公にかかっとるプレッシャーが画面から滲み出てこっちも体感できるぐらい)、性的に尊厳を奪われる怖さ、命を奪われる危機の怖さ・緊迫感、夢か現実か幻かわからない怖さ、人の怖さ、五感で感じる怖さ(聴覚、触覚(重低音とか大きい音で体に直に響く感じ、自分の鼓動等)、視覚)、先の見えない怖さ、どんどん袋小路に追い込まれていくような逃げ場がないような恐ろしさなど)が詰め込まれとって、よく1人で映画館で観れたな自分と思った。
空気感の表現も秀逸で、天気とか時間とか場所によって湿っとったり、紅く染まった夕暮れやったり、嫌な雨やったり、誰も助けてくれない薄暗くて希望のない世界やったり、怒りのこもった澱んだ空気やったり、ほんとに画面越しやのに現実みたいにひしひしとこっちに伝わってきて感動した。色の使い方と描き方なんかな???本当にプロの業でした。
最初から徹底して挟まれとったガラスに映る未麻の表現本当に大好きすぎる。最後まで観たら最初から最後まで伏線やったんやって思った。絵画のモチーフの表現が浮かぶような婉曲的なリードが最高でした。ガラスに映る姿以外にもあったと思うけどその印象が一番強い。

心臓バクバクしたシーンいっぱいあったけど、性的に脅かされたり搾取されたり(未麻自身が決めて(嫌やったり断れやんかったりしたことばっかりやったけど)やったこととはいえ結果的には業界や世間の求めるものが1人の人間の尊厳をすり潰していく的な意味で)っていうシーンが一番やばかった。絶対血圧も脈拍も爆上がりやった。普段は本当に苦手なシーンやから避けとるけど、この映画には不可欠やったと思う。ルミちゃんの言った『未麻、よく考えなよ。どうなるかわかってるの?』(うろ覚え)みたいな言葉が重い。たとえ演技でも、それが望んだ仕事じゃなかったら(望んだ仕事でもそう感じるんかもしれんけど)実際に襲われるのと同じような感覚になるんかもなって思った。TAKE2撮らなあかんくなって、最初は抵抗しとる演技しとったけどだんだん本当に虚無になって虚な目で声を発さんくなったのがリアルに見えて気分悪くなった(胃が気持ち悪くなるって言う物理的な意味で)。ペラペラな感想やけど、女優さん(俳優さん)って本当にすごいと思った。自分を役の人間とは別人って考えやなやってられへんのじゃないかなとも思った。

映画をみとってずっと感じとったのが、そんなに自分が潰されて何者かもわからんくなってしまうなら、どんな仕事やろうがどんな迷惑が周りの人にかかってしまおうがどうか逃げてって気持ち。未麻が責任感があって筋を通す芯の強い子なのはひしひしと伝わってきたけど、一番大事なのはあなたの命と心やよ…ってずっと思ってた。

アイドルの明るい曲が映画の怖さをより掻き立てるあの感覚大好き。
明るい曲に気分救われたのもいっぱいあったけど、曲の明るさが余計に不気味で怖い方をより引き立てる表現大好物でした。

また観たくて二度と観たくない(褒め言葉として)映画でした。
次はいつも映画一緒に観てくれる映画好きの友達と一緒に観たい。
ほんとに怖かった…。けど映画館で観られて良かった。映画館やからこそこの映画の良さが一番伝わってきたような気がする。再上映してくださってありがとうございました。



追記:
この映画の中ではまだアイドルがキラキラで輝いた表舞台に上がっている偶像崇拝の対象やったんやなあとか思った。(偶像崇拝はどのアイドルでも大なり小なり存在すると思う)今もそういうアイドルはもちろんおるやろうけど、最近アイドル乱立時代で昔より特別感というか希少感が薄れてきとるよなあとかぼんやり思いながら観てた。上手く言いたいことが書き出せずに言いたいことからずれたこと書いてしまっとる気もするけど、今はこれしか書けん。今のアイドルって、ファン絡まずともアイドル自体がもっとドロドロしとるイメージがなんとなくある。一部のアイドルの印象やけど。なんか昭和の『手の届かん選ばれし者』感溢れるアイドル像が少しだけ残っとってなんか良かった。ファンのスタンスとかアイドルへの向き合い方の表現がリアルで生々しかった。
ち