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パーフェクトブルーのkentarismのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
3.9
東京ゴッドファーザーズとパプリカは観た事あったが、本作をちゃんと観たのは初めて。

・この時代に性消費される女性を扱ったスリラーを観るのは重みと苦味が何倍にもなる。体感が80分の映画じゃない。さらにネット、アイドルというモチーフも今すぎる!劇場が若者ばかりだったのは単に90sライクな映像だからというわけではないはず。もっと彼らが見やすい状況を作った方がいい。今敏作品を残していくために。はよサブスクで配信!

・冒頭からレイアウト、カメラワーク、繋ぎで惹きつける映像を作っていて見入ってしまう。コンテレベルで魅せる設計してたんだな。とにかく動かして情報量だけ増やしとけっていう昨今のアニメが苦手なおっさんには刺さる…

・とはいえ所々で輝くレジェンドアニメーター達の凄まじい仕事に感動。TV局の廊下で疾走する本田雄パート凄すぎる。マジで映像のテンションのピークだった。『君たちはどう生きるか』といい本田雄の夏だね今年は。

・パトレイバー2のレイアウト集にあったインタビューで今敏は1カットに込められた意味性を語っていた。漫画家にとっての1コマの意味性、機能性、重みってのはひょっとすれば、動画を仕事にしてる人達(広義な意味)が認識してるの1カットという単位以上な気がする。同じ1でも。そういうキャリア的背景がある人がアニメーションを手掛けるとこうなるんだなぁと。本当に無駄がない映像。

・実写と違って均質に表現できるからこそ現実と虚構の境界線がより曖昧になる。メディウムを活かした物語。

・鑑賞後に本棚にあって読んでなかったOPUSを一気読み。内容の類似性。そして廃刊により掲載されなかった幻の最終回で、現実と虚構というテーマにハマったきっかけがMEMORIESということが分かった。そっちも観なきゃ。それにしても同じことに固執するというのは、優れた作家の証明なのかもしれないなと思った。執念。
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