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パーフェクトブルーのwknt15のネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

消費される女性をセンセーショナルに取り上げながらサイコホラーの要素もあり、人間の狂気を上手く描いていた。プロットがしっかりしており、一つのサスペンスとしてコンパクトにまとまった作品。

アニメーションであることを存分に生かし、登場人物の捉える世界と現実世界の境目が曖昧になるように表現されていたのが印象的だった。
未麻の部屋もその時の精神状態や時系列を細かく説明しており、また見返せば新たな発見があるのではないかと思った。

人体のデッサンもかなり正確で肉感が魅力的なのが良かった。アニメではわざとデッサンを崩すことがほとんどだが、クセのない表現で人体の美しさがそのまま描かれていたと思う。個人的にとても好みだった。

消費される人間は期待に応えるべく大衆により作り上げられたイメージを演じている。消費する側の大衆は、ありのままの姿をみていると錯覚して、自らが人間の是非を定義していることには気づかない。人間を消費するという感覚は意識しない限り顕在化しづらいものだと思う。
この作品では、過度に性的な表現を用いて消費することの気持ち悪さを感覚的に引き出しているのが良かった。その違和感をちゃんと違和感として受け取っていきたいと自戒した。

ラストの未麻のセリフには愉悦すら感じた。人間は鏡越しに自分を見つめるよりも、他の人間を見ることで自己同一性を保つ。そしてその自己像を必死に守るためには、どんなにグロテスクな光景ですら心の鏡として利用し、精神の安寧を感じることができるのだ、と改めてわくわくした。

少し逸れた感想となってしまうが、この時代のアニメーションは陰影の色相が彩度の高いオレンジに寄るのが味わい深く、なぜかノスタルジックな気分になる。
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