不在

トムボーイの不在のレビュー・感想・評価

トムボーイ(2011年製作の映画)
5.0
人は産まれた瞬間に名前を授かる。
見た目だけで決められた性別に即した名付けをされ、子供はそれを体現して生きることを強いられる。

ミカエルのどこに嘘があるというのだろう。
彼は正体を偽っていたのではない。
男になりすまし、周囲を欺いていた訳でもない。
家族にも言えない、自分の本当の性を実現できる機会が訪れた。
彼はそれに従ったまでだ。
これこそが彼の本当の、嘘偽りない姿なのだ。
ミカエルは波に揉まれる小石のように、毎日傷を負っている。
石に刻まれた傷は二度と消えることはない。
拾ってくれる人がいないと、彼はいつか波にさらわれ、海に飲み込まれてしまう。
そうならない為にも、きちんと望みを受け止める。
ただそれだけで、人はどこだって自由に泳ぎ回ることができるはずだ。
不在

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