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つぐないのkirika75のレビュー・感想・評価

つぐない(2007年製作の映画)
3.5
イアン・マキューアンの傑作と名高い原作は、ミステリーではないが叙述トリックのような仕掛けがあるため、これをどう映像化するのかという興味もあって鑑賞。
叙述トリックの部分に関しては、何と言うか割とそのまま作られていた。
そして原作を読んでから観たせいもあるが、原作の方が優れている。

しかしながら映画も、英国上流階級の郊外の屋敷の豪華さ優雅さが余すところなく表現された美術、抑制の効いた音楽、戦争の悲惨さを現実的に突きつける生々しい描写が素晴らしい。

キーラ・ナイトレイとジェームズ・マカヴォイは、小柄だが端麗な容姿と迫真の演技で、悲運の恋人たちにぴったり。
ベネディクト・カンバーバッチがあの悪役で出てきたのに驚いた。どんな役でもうまいけど、シャーロックでスターになる前ですね…。

思春期の入り口特有の未熟さで、嫉妬と誤解により取り返しのつかない過ちを犯してしまう少女。
その過ちにより人生を暗転させられる若者。
これに戦争が重なり、少女は老女になるまで罪の意識に苛まれ続ける。
ほんの些細なことが重なって人生に重大な影響を与える非情はマキューアンが繰り返し描いているテーマだが、賛否が分かれるだろうその贖罪の方法が空しく悲しい。
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