ドラミネーター

ペーパー・ムーンのドラミネーターのネタバレレビュー・内容・結末

ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

モノクロで淡々とした雰囲気を醸しつつも、母親を亡くした少女アディと、敏腕詐欺師モーゼの(非)日常を描いた心温まる冒険活劇。

母親を亡くしたにも関わらず、いや、亡くしたからこそか、アディの文字通り"大人をだし抜く"ほどの逞しさ、強かさはモーゼに「手を組もう」と言わせるほどである。
アディは父親(若しくはそれに似た存在)を欲してか、モーゼは金儲けという実利的な理由から、2人は共に"寄り道"という名の旅を始める。


〈アディの子供っぽさ〉

・カモの経済状況によってその時々の感情任せに詐欺る額を極端に変動させるアディ。
・ペーパームーンでモーゼと一緒に写真を撮りたがるアディ。
・モーゼ(大人)がびっくりするような縦横無尽な発想、行動でピンチをチャンスに変えるアディ。
 など、大人勝りの逞しさ、強かさをもつアディが時折見せる"子供らしい(かわいい)"一面がなんとも愛らしい。


〈モーゼの心情の変化〉

 モーゼもまた、アディに振り回されながらも次第に蓄えを増やしてゆき、時折アディが見せる"子供らしさ"に親に似た感情を抱いているのではないだろうか。

 自分自身、モーゼが言ったように、最初はアディに対して「可愛くない」と感じていたが、物語が進むにつれ段々とアディに愛着を抱き、可愛く感じるようになっていった。

 まさにモーゼの心情を一緒に体験しているようだった。


〈心震えるラストシーン〉

 アディが帰ってきた時のモーゼの顔がほんまに堪らんかった。アディが自分のことを好いてくれていること、戻ってきたことに対して嬉しさや愛情を感じつつも、だからこそ「なんで戻ってきてん」「この子は家に戻すべきだ」という相反する考えが、「一緒に居たいけど、居るべきじゃない」というジレンマを感じ、真顔になる。
モノクロはやっぱり「演技力」が光る。
主演二人とも(実の親子)最高の演技やった。

 そして、長ーーい道のりをオンボロトラックが二人を乗せて走り出すカットは最高。まだ二人の道は長く続いていく。どこに行き着くのだろうか。
二人の間に何かしらの"愛"があるのは間違いない。


第46回アカデミー賞(1974年)にて、本作で助演女優賞に輝いたテイタム・オニールの史上最年少記録(10歳)は、2023年現在も破られていない。