KSat

ペーパー・ムーンのKSatのネタバレレビュー・内容・結末

ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

顎が私と似てるじゃない。

この一言に始まる、謎めいた男と少女の珍道中。まあ、そりゃそうだ。親子だもの。もっとも、劇中の二人は果たして親子だったのか、最後までわからないままだった。

妙に説得力があるのは30年代という時代故か。極めてリアルで、1973年という本作の製作年の雰囲気が微塵も漂ってこない。これは、モノクロームの画だけが原因ではないはずだ。

この監督の出世作「ラスト・ショー」では、大作ばかり撮ってた古参・ロバート・サーティースがキャメラを回し、ノスタルジーと同時にドッシリした重さを感じさせるモノクロームはそれはそれで美しかったが、本作でのコヴァチ・ラースロー(あえて母語であるハンガリー語風に言うと)によるキャメラは、一枚一枚が一々写真みたいで、ちょっと普通じゃないのだ。それに加えて、まあ、常にリズムがいい。心地よ過ぎる。脚本が極めてシンプルなだけあって、これはもう演出の映画だということが明白だ。
本当の意味での映画、である。
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