Morohashi

フィラデルフィアのMorohashiのレビュー・感想・評価

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
4.0
ベネット(トム・ハンクス)がどんどん痩せていく役作りが凄まじい。
最初の頃、アザを隠そうとファンデーションを塗りたくる姿が切ない。


この映画は一見するとエイズ患者に対する偏見だと思っていたら、本質は同性愛者への偏見だった。

この映画を見て思ったのは、最近も時の総理大臣が「社会が変わってしまう」と答弁したことからもわかるように、同性愛者が幸福を享受することはこんなにも難しいのか!っていうこと。
これは現代の日本の社会が抱える大きなテーマ。
聖書に反するという、いわば信条の部分で苦戦したキリスト教圏とは異なり、日本の場合はほぼほぼ偏見。
一方で私自身も子どもの頃は「恋愛は異性との間でするものだ!」って頑なに信じていたので、映画の中の人たちの気持ちもよくわかる。

好きなものを好きというと迫害される不条理。
誤解を恐れずに言えば「トマト好きなんです」と言うだけで「あいつトマト好きなんだってさ。やばいね。ちょっと距離置こう。」と言われるレベル。

今は昔に比べてアメリカではかなりそのあたりの認知度も広がってきただろうけれど、映画ではこの時代にあって息子の性的嗜好を理解し支持できた家族もすごい。

人間は人種差別、宗教差別、同性愛者差別…と、常に差別の対象を探しているのかもしれない。



この映画の中の弁護士は、かつて黒人差別で苦しんだからこそベネットの弁護を引き受けたと考えると、胸が熱くなる。
普通に「私ゲイなんです」と躊躇なく言える社会だったらどんなにいいことか。

当然ながら、人間はその人の変えられない性質(性別、国籍、肌の色)で判断されるべきではなく、能力や性格で判断されるべき。
Morohashi

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