あき

フィラデルフィアのあきのレビュー・感想・評価

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
4.5
エイズを通して物語が描かれているが、
人間の深層心理として、自分と違うもの、理解できないもの、生理的に受け止められないものへの拒否感というのは、時代を越えて共通した人間心理であり、世界的な事象であることを示している。
日本的に言えば“村八分“といえば分かりやすいだろう。
いわゆる自分たちのコミュニティに突如割り込んできた理解できない、したくない者に対する村ぐるみでの圧倒的拒絶感に共通する。
ただ、人間というものは残酷というか単純なもので、ある程度騒ぎ尽くすと何事もなかったかのように忘れ去る。
この映画が上映されたころは1000万人ほどの感染者数レベルで激しい偏見と差別が繰り広げられた一方、現在に至るこの40年で4倍にも膨れ上がって4000万人に迫る勢いで感染者数が爆発的に広がってるのに、今ではほとんど話題にさえされず、世間一般の関心にのぼることはほとんどない。
結局はエイズに限らず、未知なるもの、自分は別であると思いたいものに対する偏見は時代を越えて繰り返され、ある程度騒ぎ尽くすころには新たな未知なるものが現れてそちらに関心を吸い寄せられ、あっという間にそれを話題にしてたことさえ忘れ去るのだ。
コロナ初期の感染者もまた同じく。
だからこそ、この映画の主人公にあるように、初期の罹患者の肉体的精神的苦痛を思うと胸を締め付けられるし、自分もその差別に巻き込まれることも覚悟しながら差別と偏見に対して公然とたたかった弁護士には敬意しかない。
ただ、この手のものは、手を変え品を変え繰り返される終わりのない悲劇なのだと残念ながら悲観的にならざるを得ない。
あき

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