すずきじみい

フィラデルフィアのすずきじみいのネタバレレビュー・内容・結末

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

トム・ハンクスの作品ではこれが一番好き。
私は俳優さんが、いつものその人のイメージと真逆の役をやってる映画が好きだ。だって、化けて演技するのを仕事にしてるのだから、自分自身と全く別人になりきれるかを試される場に立ってこそ、プロの仕事だと思うから。
この作品のトム・ハンクスとか『モンスター』に出たシャーリーズ・セロン等が、アカデミー賞授賞式の、主演男優賞、女優賞で名前を呼ばれた瞬間、無意識にガッツポーズしてた。
作品の内容は、1990年代前半のエイズとゲイ差別を描いているのだけど、そのエイズ差別が、今の日本のコロナ差別とそこかしこ似てるのだ。
顔にシミがあると、エイズと疑われ、ジロジロ見られる。エイズというだけで、同じ物を間接的にさわったり、握手したり、近くに一緒にいる事を避けられる。医学界からは、血液、精液を介してしかうつらない、と発表されてるにもかかわらず。
又、トム・ハンクス演じるアンドリュー弁護士を、エイズの為、不当解雇した重役陣の一人が、輸血が原因でエイズに感染した自分の秘書の女性に、
「自分のせいでエイズにかかったのでない人々に、深い同情を感じます」
そう、口では、言いながら、その女性をバイ菌でも見るような目でみたり。
これも、コロナ感染者を見る今の日本の人々の視線に似てる。
そして、そんなエイズ差別に加えて、30年前の米国のLGBTに対する偏見や差別の激しさも描かれている。
米国人達が、ゲイへの差別発言を堂々と、当たり前な顔で喋ってるシーンなんて、今の映画じゃ、絶対に見られないだろうけど、この作品の中の、どのおじさんも、ゲイへのヘイト発言をする。
デンゼル・ワシントン演じるジョー・ミラー弁護士も、人権派弁護士なくせに、LGBTに、強い偏見を持っている。だから、最初は、アンドリューの、不当解雇と戦う裁判の弁護を断る。この30年前の米国の空気はちょうど今の日本と似てると思う。
でも、当時は、忌み嫌われる存在だった、ゲイ&エイズにかかったアンドリューにも無限の愛を注ぐ家族、親戚、恋人、友人達がいるし、法廷での、原告、被告の戦いは紆余曲折を乗り越えて、正直者(アンドリューとジョー)が勝つ。その気持ち良さ、ヒューマニズムの王道!!
そして、その後に来る死の切なさ。
それにしても、トム・ハンクス、ほんとに病人そのものだったなぁ……
あの人、こんなに演技上手かったかしら?と、やはり、そっちの感動が最後に残ってしまう私でした。