このレビューはネタバレを含みます
若き日のジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオが出演しているのに、存在すら知らなかった作品。
派手さは無いが心にとてもじんわり沁みる温かみがあり、宝物を見つけたような、出会えて本当に良かったと思えたヒューマンドラマ。
目を見張るのはレオ様の演技。演じているようには全く見えないくらい自然に、知的障害のある18歳になりきっていた。
自然体のジョニー・デップも良い。
いろいろと問題を抱えた家族のことでがんじがらめになっていても、当たり前のように家族を愛し、自己犠牲をいとわないギルバート。
見ていて辛い気持ちになるところを、それを超えて爽やかな感動を覚えるのは、献身的な彼の姿とそれを核としたグレイプ家独特の強い絆が胸を締めつけるから。
貧困と小さな町の閉塞感の中、人妻の誘惑に乗り、近所の子供が母の姿を覗き見するのを許すのは、心の均衡を保つための、隠れた抵抗のよう。
「あなたはずっとここにいると思ったから。ここを離れられないからよ。」
ベッキーとの出会いから、町を一度も出たことがなかったギルバートに芽生える心の葛藤を、スーパーやバーガーショップの進出で今まさに変わりつつある小さな町とリンクさせながら、繊細に描いている。
ギルバートを不憫に思いながらも、良い息子を持って幸せな母親だなと感じる自分もいて...歳のせい???
「あなたのような息子に育てたい。」
まさにギルバートを見て私も感じること!
ベッキーを紹介された母。
行動に出たのは、前向きに変わろうとしていたのか、自分の身体に起こりつつあることを感じたのか...
そして、あんな事に!
どうしたらいいか、私まで頭を抱えてしまった。
母親を守るための決意が家族を生まれ変わらせる。
希望が感じられる清々しいラスト。
明るい未来を心から願わずにはいられない。
【notes】
●カマキリの話は、今のままのギルバートの未来を暗示(前触れもなく逝った父親と不倫相手の夫も?)
●母親役は、彼女自身とバックグラウンドが似た役柄。若い頃の写真も本人。
●葬儀屋で、プライベートでも霊柩車を使う友人。彼には任せられない?裏話。
●原題:What's Eating Gilbert Grape
(ギルバート・グレイプを悩ませるもの)