半兵衛

大魔神の半兵衛のレビュー・感想・評価

大魔神(1966年製作の映画)
4.0
衣笠貞之助や溝口健二といった巨匠たちの作品を支えた超一流の技術力を誇る大映京都ならではの、子供だましではない本格的な日本風の特撮映画を製作しようとする意欲に満ちた特撮時代劇。こんなに金をかけるかとため息が出そうになるセットの絢爛さも凄いが、それ以上に森田富士郎カメラマンによる巨大なセットを長回しで丁寧に撮影してドラマに奥行きと風格をもたらすテクニックが素晴らしすぎてまだ金も技術もあった日本映画黄金期の実力をまざまざと見せつけられる思いに。

大半は普通の時代劇ドラマで肝心の大魔神は後半10分しか出てこないが、そんなことがハンデにならないくらい人間の視野を意識した特撮や大魔神の怒り狂ったような破壊、キレた目力のパワーが今でも観客の度肝を抜くシーンとなり多大なインパクトを放つ。

純真なヒロイン高田美和もいいけれど、伊達三郎や木村元といった大映が誇るバイプレーヤーたちが顔を出して活躍するのもファンとしては嬉しい限り。そして後に『必殺』シリーズなどで活躍する遠藤辰雄(太津朗)&五味龍太郎コンビによる憎々しい悪役ぶりも見事で、大魔神の暴走を更に盛り上げる。

安田公義監督は早くに亡くなってしまったためかあまり映画評でも取り上げられずやや不遇な印象だが、本作でも色々な娯楽作を作り上げた職人的な演出力を存分に発揮して強い個性は感じられないものの堅実な面白さをもたらしている。
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