ふうこ

ドライビング Miss デイジーのふうこのレビュー・感想・評価

ドライビング Miss デイジー(1989年製作の映画)
4.8

ただ観ているだけで満たされていくような、ワンシーンを、一つの台詞を、まるで味わうかのような、そんな作品でした。
個人的には、江國香織さんの綴る文章を読んでいる感覚に非常に近いです。…が、これはあまりに私個人のニュアンスなので伝わらないかもしれません(苦笑い)

ミス・デイジーは頑固な性格の未亡人。ある日危うく自動車事故を起こしかけたため、息子のブーリーは半強制的に彼女のために専属運転手を雇う。運転手を務めることになったのは初老の黒人、ホークという男性。ミス・デイジーは、持ち前の頑固な性格でホークを拒絶するが……

ミス・デイジーが一人で暮らすお家があまりに素敵でした。上品で可愛らしい佇まいに憧れます。調度品の一つをとってもわくわくさせられ、例えが上手く見つからないのですが、まるでドールハウスの中で撮影されているかのような魅力的なお家なのです♪
勿論室内のシーンのみならず、冒頭のワンシーンからラストシーンまでどのシーンにも魅入ってしまいました。

じわじわ…と涙が滲み、静かに染み入るように感動しました。なんでもないようなシーンで鼻の奥がツーンとしてしまい、思わず自分でも「えっなんで?」と(笑) そんな、不思議な感動に包まれた作品でした。

“ユダヤ系”や“黒人”などいわゆる「偏見」について、どちらかというとハッキリ描かれていました。ブーリーの妻とブーリーの自宅に務める黒人の娘との関係性にはその偏見や差別が顕著に現れており、印象的です。
しかし私が考えさせられ、感動したのは、どちらかといえばその「偏見」についてではなく、「老いていく」ということについて。時間の流れが、登場人物たちの外見を変え、関係性を変え(こちらは本作では良い意味の変化ですね)、内面までをも変えていってしまう。この圧倒的な「時間」という力の強さをひしひしと感じました。

ラストシーン、どうしてあんなに感動するのか。正直私の文章力では到底言葉に表せません。
ミス・デイジーとホークの絆を深く確かなものにしたのも、二人を意思とは関係なく老いていかせるのも、「時間」なのです。

まだまだ青臭い年齢ですがとても感動しましたので、年を重ねるごとに本作の印象がどう変化していくのか、少し楽しみな気がします。
父の好きな作品の一つということで鑑賞しましたが、若いうちに一度観れてよかったです。お腹いっぱいです (*^ ^*)
ふうこ

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