KeN

ドライビング Miss デイジーのKeNのレビュー・感想・評価

ドライビング Miss デイジー(1989年製作の映画)
3.7
NHK BSプレミアムシネマの録画にて。20年ぶりぐらいの再見。

「この変化の時代における我らの最大の悲劇は悪意に満ちた人々による中傷や暴力ではない。善意ある人々の沈黙と冷淡さです。憎むべきは闇の子供たちの言葉と行いだけではない。光の子供たちの恐れと無関心なのです。」by マーティン・ルーサー・キング牧師の演説

プライドが高く偏屈でちょっと気難しいユダヤ系の老貴婦人と黒人運転手の交流を描いたハートウォーミングな作品。モーガン・フリーマン そしてジェシカ・タンディという熟練名優ならではの2人の熱演がひかるヒューマン・ドラマ。殊にアカデミー主演女優賞としては最高齢受賞者となる80歳でオスカーをを獲得したジェシカ・タンディの演技は本当に見事。初めて この作品を鑑賞した時にはヒッチコックの『鳥』で執拗なまでに鳥に襲いかかられていたあのヒロインと同じ俳優だとは思いもしなかったが…(苦笑)

特に派手な演出や物語の展開があるわけでもなく、2人の間のちょっとユーモラスなやり取りや会話を中心に淡々と時が流れていく物語であるのに、そうした展開の中で未だに米国社会に根強く残る人種差別問題や異なる宗教観などの重めのテーマを盛り込む手法は押し付けがましいわけでもないのにも関わらず説得力がある。しかも、それがユダヤ人の雇用主 そして黒人の使用人という歴史的に互いに人種差別を受ける立場にある側の視点から描かれている物語であれば尚更。
デイジーとホークのように、たとえ 最初の出会いが偏見やら先入観やらで掛け違えたボタンのような関係であったとしても、どちらか一方にでも相手に少しでも歩み寄ろうとする気持ちがあれば、時の流れとともに信頼や友情といったものが自然と芽生えてくるのが人間らしさではないのかな?


劇中にラジオ(?)から流れるドボルザークのオペラ『ルサルカ』の美しいアリア「月に寄せる歌」と、素敵な内装のデイジーの邸宅も印象的。
KeN

KeN