菩薩

英国王給仕人に乾杯!の菩薩のレビュー・感想・評価

英国王給仕人に乾杯!(2006年製作の映画)
3.5
小さな国の小さな男が小さな身体で追い求めた大きな幸福、そんな彼の数奇な生き様に時代に翻弄されたチェコの近代史が投影される。人に仕えて来たはずの彼がそれ以上に忠実であったのは彼自身の欲望であるが、それは何も特別なことではなく、人は皆欲望に駆られた悪魔の化身であるとの言及が度々なされる。幸福と不幸とが表裏一体を成し、浮かんでは沈むを繰り返しながらも徐々に高みへと上り詰めていく彼であったが、そこに戦争が大きな影を落としていく。全てを見ず全てを聞かず全てを見て全てを聞く、己を滅しながらも目の前の職務に忠実であった(時にかなり狡猾でもあったが…)彼の給仕人としての人生、他人を鏡で映してばかりで自らを顧みなかった人生の中で、何を得て何を失って来たかにようやく気付く日がやって来る。一杯のビールとそれに合うソーセージ、小さな幸福の積み重ねこそが人生最大の幸福であるとの着地、ただそこに込められた血で民族を隔てる事に対する反抗心や、平和に対する思いは熱い。
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