ボクシング映画の金字塔ではあるが『ロッキー』なんかのアメリカンドリームを掴む美談には断じて落とし込まない。
ボクシングだろうが結局は暴力は暴力!
という姿勢はとってもマーティン・スコセッシらしい。
彼のフィルモグラフィーとして見ると、それまでの行きどころのない暴力衝動に身を委ねる『タクシードライバー」のような作風と、90年代に本格化する『グッドフェローズ』のようなマフィア一代期路線の狭間のような作りになっている。
暴力に身を投じるボクサーの一代期であり、ジェイクはどうしても暴力が身から抜けない。そして一人の男の栄枯盛衰が2時間のうちに繰り広げられる。一時は羽振の良かったけれど、いずれ身を持ち崩し、いつの間にか独りぼっちで場末の劇場出番を待つように。
荒々しいボクサーとしての肉体演技と全てが変わり果てた後の姿のギャップに痺れる。これを一人の肉体で演じているという事実がまたすごい。デニーロすごい。