エジャ丼

レイジング・ブルのエジャ丼のレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
3.9
「“ブロンクスの雄牛”」

1941年、ジェイク・ラモッタは無敗のボクサーだった。しかし、ある試合で不公平な判定により敗れたラモッタは、妻や弟のジョーイにも怒りを露わにする。そんな中、ブロンドの少女ビッキーに心惹かれた彼は猛アプローチの末交際を始める。だが次第に、ラモッタの病的な嫉妬心が彼自身を少しずつ崩壊させていく。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観たところで、ディカプリオ、デ・ニーロの出演するものを中心にスコセッシ映画を観ていこうのコーナー。今回はこの作品。

ほぼ全編通して白黒画面の続く今作。『ロッキー』のような心燃えるテーマを奏でる爽快な映画ではなく、ラモッタというボクサーの束の間の栄光と、転落の物語。粗暴で疑心暗鬼な性格のラモッタと、それに巻き込まれる彼の身近な人間とのぶつかり合いが、非常に人間味に溢れている。それは、彼らが見せる感情に任せた拳の打撃(ファイトではなく、ただの痴話喧嘩)にこそ顕著にあらわれると思う。その人間同士のぶつかり合いの描き方の妙なリアルさがスコセッシの作風の特徴であり、魅力であるはず。それを存分に堪能できる作品。

作品を通したデ・ニーロの役作りは素晴らしい、てか、すごい。ラモッタの人生の彩度が低くなっていくほど、肉体を纏っていた鎧が筋肉から脂肪へと変わり、見た目の変化として現れる。冒頭のラモッタの姿はまさかデ・ニーロだとは思わなかったし、鋭さの無くなった身体の輪郭が、見るに堪えない痛々しさをひしひしと感じさせた。「デ・ニーロ・アプローチ」、すごい。

ボクサーって引退したら店開くのが常道?