ダイナ

落下の王国のダイナのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
4.5
撮影中大怪我を負ったスタントマンのロイは入院中の少女アレクサンドリアに出会う。絶望の中自殺を考えるロイはアレクサンドリアに自殺用の薬を用意させるため惹きつけようと他愛のない想像のおとぎ話を語りかける。いっときの繋ぎでしか無かった話が大きな変革をもたらすという冒険ファンタジー。

空想の冒険物語ということで現実がリンクされていて、話の登場人物が病院周辺の人達でイメージされる部分や、話の中で少女が「この人好き!この人も好き!」と色々茶々を入れるのが面白く、冒険物語と病院での出来事のターン制が双方に影響を及ぼしていく展開がとても面白いです。冒険パーティの性格やルックもそれぞれが目を惹くユニークさで、現実と空想のジャンプカット描写も上手い!と唸る部分が何個もあって好きです。

そしてなんと言っても映像の素晴らしさ。ターセム・シン作品のCGでも再現難しいんじゃないのと思うような現実的な(というか現実だから当然なんだが)質感ある異質な映像センスが抜群に発揮されています。特に本作では「舞台設定」がとても素晴らしく、世界各国ロケーションで撮影された映像は「リアルなのにリアルに思えない」ほどの魅惑幻惑でダイナミックな世界観を映し出しています。ザ・セルの閉塞的でダークで過激な世界観を映し、本作ではより広大な世界を自然に乗っ取ったカラーで鮮やかに映す。底の見えない作家性がとても好みです。

植物の大葉が落ちる導入から手紙を落とす少女、入院のきっかけにはじまり展開の至る所に「落下」が散見され、無意識の中で落ちるという事象について印象深いものを植え付けられるのも上手いと思わされます。愛と復讐の壮大な、少女を誘惑するだけの作り話が、小さい病室でたった2人が紡ぐ壮大なフィクションの世界での冒険話がどういったゴールを迎えるのか。果物を落としてスイカにするゲームが流行ってる今だからこそ「落下」の映画を観るべきだ(強引)。
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