Myon

落下の王国のMyonのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
4.8
映像美や美術面を重視する人間にとっては最高の映画。ロードムービーも真っ青な、使い方の贅沢すぎる数多のロケ地。キャラクター性を反映させた衣裳。冒頭のモノクロ映像と、色の氾濫する御伽噺パート、そして質素な現実パートのコントラスト。それら総てから色彩と構図…画的な美に対する並々ならぬこだわりを感じる。

キャストも表情豊かで素晴らしい。御伽噺で異質な役割を演じた人が、現実では普通に周囲に溶け込んでいるのを見つけるのが楽しい。

これだけ豪華な映画なのにストーリーの根底には荒唐無稽さが横たわっている。これは悪い意味だけでなく、青年の行き当たりばったり投げやり感を映像で表現するのがとても上手いということ。要所で入る少女のツッコミがまた笑える。
このカティンカちゃんが本当に名女優で、彼女のお陰で取り留めのないストーリーが感情移入できるものになっている。

御伽噺でも現実でも青年と少女にとって、落下は忌むべきものだったかもしれない。それでも2人を繋ぐものが残っていて、それが映画(の落下)だというのが素敵。これ以上のめでたしめでたしがある!?ってくらい、大好きな作品になった。
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