たぬー

すべての美しい馬のたぬーのレビュー・感想・評価

すべての美しい馬(2000年製作の映画)
3.3
戦争は終わり、テキサスではカウボーイは時代遅れになってしまった1940年代後半。天才的カウボーイ青年が親友と共にメキシコに行ってあらゆる体験をして帰ってくる話。

典型的な神話的構造の往て還し物語。
コーマックマッカーシーの原作は素晴らしい小説。原作ファンとしてはそんなに悪くは無かったけど、もうちょっとなんとかならなかったのかという点も。普通のカウボーイものになっちゃってる。
ブレヴィンスのキャラクターはイメージ通り。ペネロペクルスも良かった。

この作品の中心に据えられた馬という生物の美しさ、神秘性があまり感じられない。原作ではグレイディの馬観についてこんな一文がある。

"彼にとっては馬を愛する理由こそ人を愛する理由でもある、それは彼らを駆る血とその血の熱さだ。彼が敬い慈しみ命のかぎり偏愛するのは熱い心臓を持ったものでありそれはこれから先もずっと変わることはないだろう。"

この作品を映像化するなら馬の素晴らしさをブレイディが感じているように見せる必要があると思う。クロエジャオ監督の「ザ・ライダー」ぐらい頑張ってほしかった。
ブレヴィンスが乗っていた「すげえ馬」と表現されていた馬のすごさも伝わらず。

原作で感じられた時間経過や旅の長さがこの尺ではあまり感じられなかったので、この物語を語るには120分という尺では足りない気はする。ちょっと駆け足な印象。原作では17歳という設定のグレイディを20代後半のマット・デイモンが演じるのは無理があった。この頃のヒースレジャーがやってたら良かっただろうなあ。
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