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タッカーのoukayukaのレビュー・感想・評価

タッカー(1988年製作の映画)
3.7
自らの理想の車を追い求め、多くの人を魅了した男、プレストン・タッカーの実話を元にした映画。監督はフランシス・コッポラ。
装甲車用に開発した防弾ガラス製の旋回砲塔が軍に採用され、財を成したタッカー。終戦後、長年の夢を実現するため理想の車「タッカー・トーピード」の開発に取りかかる。

しかし乗用車づくりには膨大な資金が必要。そこで彼は雑誌広告でそのコンセプトを公表、多くの賛同者を得ることに成功する。そしてウォール街にコネのある人間をCFOとして採用し、株を発行して資金を調達。さらにB29を生産していたシカゴの工場の払い下げを受け、本格的な生産に向けて踏み出す。

しかしデトロイトのビッグ3による妨害で、原材料や部品の調達が困難を極める。さらに彼らの政治的圧力により、SECが詐欺と証券取引法違反の疑いでタッカーを提訴。届きそうだった夢の前途に暗雲が立ち込める。

51台しか生産されなかったタッカー'48。流線形ボディ、シートベルト、ハンドル連動型ライト、また諸事情によりプロトタイプのみ搭載となった燃料噴射、ディスクブレーキ、マグネシウムホイール、チューブレスタイヤなど、時代を先取りしていた革新的な車だった。そのデザインは、75年後の今見てもかっこいいと思える。

大きな夢を語り、強引に周囲を巻き込んで実現に向けて突き進んでいく姿はテスラのイーロン・マスクを彷彿させる。(裁判所のロビーの壁にニコラ・テスラのポスターが貼ってあるのはさすがコッポラ)
また、試作品すらできていない段階で夢のある広告を出してアーリーアダプター層の耳目を集める手法は、Kickstarter の先駆けとも言える。現代のビジネスパーソンにも色々な参考にできそうな映画だった。
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