ShinMakita

タッカーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

タッカー(1988年製作の映画)
2.8
1945年、デトロイト。自宅裏の納屋にある工場を運営するプレストン・タッカー。空軍機の風防生産が工場の主業務だが、タッカー本人はある野望を胸に秘めていた。それは自動車の開発。幼少期からクルマに魅せられていた彼は、オリジナルカーを生産することが夢だったのだ。流線型セダンで、リアエンジンシステム、シートベルトと安全ガラス標準装備の近未来の自動車だ。ある日、自らデザインしたクルマの画を手にスポンサー探しを始めるタッカーだが、当然無名な彼にカネを出す人間などはいない。そこで次に打った手は、いきなり雑誌に「新車発売!」の広告を載せることだった。これは爆発的反響を呼び、全国の販売店からタッカー車を売らせてくれとラブコールが殺到する。タッカーはそんな販売店から契約金を受け取り、これを元手に「タッカー自動車」なる株式会社を設立。設立の条件は、生産工場の確保・試作車の提示・自動車メーカー重役を役員に迎えることだった。友人エイブが交渉係として各所に奔走し、役員として自動車メジャーの副社長だったベニントンを確保。さらにシカゴにある軍払い下げの巨大工場とも契約できた。しかし肝心の試作車が…なかなか完成しない。株主らにお披露目の期日が近づくなか、工場の職人たちが徹夜で作業を続けるのだが…


「タッカー」4Kレストア版。

以下、「他人に近寄るな。ネタバレがうつる」

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昔テレビでブツ切れ視聴しただけで、今回が初鑑賞みたいなもんです。観たい映画がないもんで、たまたま観た作品。


だーけーど、これ、最高!^_^


一言で言えば、アメリカ版のリアル「下町ロケット」。阿部寛とジェフ・ブリッジスの違いは、そのキャラクター性。はっきり言ってジェフブリ=タッカーはヤベェ奴なんです。口が巧い人たらしで、言ってる内容は誇大妄想もいいところ。とても実現不可能な自動車を作ろうとするんだから、ある意味狂ってますよ。試作車も無いうちから宣伝しちゃう無謀さには唖然ですよね。

試作車お披露目はなんとか乗り切るものの、コスト面で大量生産は不可能・会社乗っ取り・自動車メジャーの妨害とトラブル連発。ついには詐欺容疑で告発という大ピンチ。日曜劇場枠でこの話やったら、視聴率30%は堅いでしょ。まさに、池井戸潤ブームの今の日本で公開すべき作品でしたよ。

役者陣も魅力的。脂ののったジェフ・ブリッジスも良いけど、妻役にボーン・シリーズのジョアン・アレン、工場のメカニック役はコッポラ映画の常連フレデリック・フォレストと日系アクター界のレジェンド的存在マコ岩松。タッカーJr.を演じるのは、「薔薇の名前」直後のクリスチャン・スレーターだし、ハワード・ヒューズを演じるのはクセ者キャラの個性派ディーン・ストックウェルですよ。そして最も素晴らしかったのはエイブ役、マーティン・ランドー。タッカーに振り回されながらも最後まで彼についていく老人なんだけど、彼が辞表を出すとこはグッときたなぁ。賞に縁のない人でしたが、「エド・ウッド」の前に唯一獲得したのが本作でのゴールデングローブ助演男優賞でした。


とにかく、リバイバル上映で高揚したのは久々の経験。30年前の映画だけど、今年の私的ベストテンに入りそうな感じ。TSUTAYA発掘良品に並んでいるので、ぜひ!
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