喜連川風連

武士道残酷物語の喜連川風連のレビュー・感想・評価

武士道残酷物語(1963年製作の映画)
4.0
時代劇の美しい部分をぶっ壊していくベルリン映画祭金賞受賞作品。

江戸、明治、戦争、現代劇。これら全ての描写をひとつの映画で観られるなんてそうそうない。日本映画の総決算。

6つの時代の主人公を萬屋錦之助が1人で演じきる。

主君のために、死ぬことが美徳とされた価値観。これが徹底的に冷めた視点で描かれる。

時代を通して手を替え品を替え、今に残っているこの美徳。
主君から国、国から企業へ。今度は何に忠義を尽くし、命を散らすのか。

このような価値観が特攻精神やブラック企業誕生へと連なっていることを示唆していてとても面白い。

欧米人についぞ、理解されなかった特攻精神。これをある数奇な武士の家系から解き明かす。

個を殺した先に、高度成長期があり、破綻した先に、自殺者(ハラキリ)の増加が待っていた。

国家も、家柄も、企業も、全て人間生活をより良くするための手段である。
それによって、個人が犠牲になることはあってはならない。

とは思いつつ、犠牲になることやそこに殉じることに生きがいを感じる人もいるから、とても難しい問題だ。(三島由紀夫のように)

あんまり国民性という言葉を使いたくないが、日本に根づいた儒教思想が、国民性の一端を担っていることは確かなのかもしれない。
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