うえびん

カティンの森のうえびんのレビュー・感想・評価

カティンの森(2007年製作の映画)
3.6
レクイエム

2007年 ポーランド作品

ダークグレー
ダークグリーン

くすんだ映像が
暗黒の世界観を醸す

第二次世界大戦
隣国ソ連とドイツに翻弄された国
ポーランド

戦争プロパガンダ

事件の真相は本作が如実に語る
静かに…、淡々と…

地政学上の緩衝地帯ゆえの
大国に振り回された悲劇

現在も続く
緩衝地帯における戦争

世界は複雑になり
国も一枚岩では捉えきれない

私たちの国も例外ではない

アメリカと中国の緩衝地帯
暗躍するネオコン勢力

作中の少ないセリフは
現在の世界情勢をも物語る

「時代が変わった、私たちはその奴隷」


『スペイン内戦からウクライナ戦争まで「正義の戦争」は嘘だらけ!』(渡辺惣樹・福井義高)


渡辺)ロシア軍によるとされているブチャでの虐殺も慎重に判断すべきです。2022年3月30日、ロシア軍が撤退、31日、ブチャの市長が撤退確認声明を発表、そのとき、虐殺のコメントはありません。4月2日、ウクライナ軍が奪還するやいなや、虐殺報道と写真がロイター電で出され、さらに『ニューヨーク・タイムズ』が報じました。ところが、遺体は3月19日に撮られていたことが判明しています。

このように事実関係を整理するだけでも、戦争プロパガンダの臭いがプンプンします。ロシアは安保理事会で独立調査委員会の設置を要求しています。

福井)ところが、報道直後のロシアの要請を英国は拒否しました。その後、国連人権理事会は調査することを決め、これまで国際刑事裁判所をはじめ、様々な国・機関が調査していますが、断片的な報道がなされるのみです。確実な証拠に基づく包括的な報告が待たれます。

渡辺)(中略)ブチャの虐殺は1940年の「カティン(カチン)の虐殺」(カティンの森事件・第二次世界大戦中のソ連によるポーランド将校大量殺害事件)に似ています。

福井)1943年に数千人のポーランド軍将校らの殺害現場を見つけたナチス・ドイツは赤十字に調査を要請、積極的に協力しました。ところが、ソ連はドイツの仕業だと主張し、英米もソ連の主張を否定しませんでした。ソ連がスターリンの命令で行ったと認めたのは、半世紀も経った1990年になってから。

ブチャの虐殺も先入観なく、十分かつ慎重に調査すべきです。なお、国連ウクライナ人権監視団のマチルダ・ボグナー代表は2022年5月10日の記者会見で、ロシア軍によるものだけでなく、ウクライナ軍によるロシア兵拷問に関する信頼すべき情報を得たと発表しています。


「悪人が悪人を裁く」

戦争プロパガンダ

争い戦い合う者(国)同士は
正義と悪の二元論では捉えきれない

正義の名の下に隠蔽される悪

殺し合い、奪い合うことを“悪”とすれば
争い戦い合う者(国)同士は“悪”対“悪”だ


福井)ポーランドは東欧における米国の出先のような存在です。米国内にはポーランド系移民が多く、反ロシア傾向が強い。カーター政権で大統領補佐官を務めたブレジンスキーがその典型です。近年、CIAの拷問施設まで提供していたことを公式に認めました。

そもそもポーランドは歴史的に東にロシア、西にドイツと囲まれるなか、大国意識も強い国です。戦間期には、英仏を利用して、ドイツ・ロシア(ソ連)を出し抜こうとしました。

渡辺)実は、捨て駒として利用されていただけだったのですが。

福井)今回のウクライナ侵攻でも、反露強硬派の急先鋒です。しかし、ポーランドとウクライナは歴史的に敵対してきました。そのため、ウクライナを戦争で疲弊させ、旧ポーランド領のウクライナ西部地域を自らの勢力圏にしようとしているのではないかという穿った見方もあります。(たとえば、エマニュエル・トッド)

渡辺)東欧の盟主になろうというわけですが、そんな野心は潰されるだけです。



「敵と味方、重要なのは別のこと」

祖国を守るために自らの命を賭ける人
自分を利するために他者の命を奪う人

悲劇は往々にして前者に起こり
遺された家族にも深い悲しみを残す

神への祈り
神をも恐れぬ冒涜

無慈悲な世界

本作には
ワイダ監督の
その人たちに対する
レクイエムが奏でられている
うえびん

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