マルケス

カティンの森のマルケスのレビュー・感想・評価

カティンの森(2007年製作の映画)
4.0
アンジェイ・ワイダ監督を知ったきっかけは名画座。『地下水道』『灰とダイヤモンド』の2本立てだった。ポーランド知識ほぼゼロのオバカ学生に理解できるはずもなく、監督に申し訳ない出合いになってしまった。
大尉だった父がカティンの森事件で殺害され、自身もレジスタンスに加わった監督にとって、戦争は撮らなければならない命題だと今なら理解できる。

観客はポーランドが味わった絶望を追体験させられる。西からナチスドイツ、東からソ連に攻め込まれ、挟み撃ちに遭ったポーランド人は逃げ場を失い、絶望の中で立ち竦む。
ラストではカティンの森で何があったか明らかになる。次々と処刑され、埋められるポーランド人将校たち。リアリズムに徹した演出でこんなにも無感覚に人を殺せるのかと、背筋が寒くなるほどの絶望感が襲ってくる。

個人的にはイェジ中尉が忘れられない。処刑は免れたが、侵略国ソ連の軍服を着る自身を責め続けた果てに、自ら銃で頭を撃ち抜く。悲痛なシーンだった。

ポーランドはナチスドイツよりソ連(=ロシア)への不信感、拒絶感の方が強いと思う。
カティンの森での残虐行為をナチスになすりつけただけじゃない。不可侵条約の破棄、ワルシャワ蜂起を見殺しにしたなど、ソ連の数々の卑劣さを嫌悪し糾弾する、ポーランド人の声が聞こえるようだった。
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