けーな

素晴らしき戦争のけーなのレビュー・感想・評価

素晴らしき戦争(1969年製作の映画)
4.1
フォロワーさんのレビューで、この映画を知ることができた。とても素晴らしい映画だったので、観ることができて、本当に良かったと思う。もっと多くの人に観て欲しい。

なんと言っても、この映画の特筆すべき点は、このタイトル。戦争に最もふさわしくない形容詞『素晴らしき』と言っていること。原題は、「Oh! What A Lovely War」。原題でも、戦争が『lovely』だと言っている。  

確かに、この映画には、一見、楽しげな雰囲気が漂っているシーンが多くあって、流行りの歌や讃美歌を替え歌にして、楽しく歌っているように見えるのだけれども、実は、戦争の酷さ、無意味さを痛烈に皮肉って表現しているという秀逸な内容だった。

反戦のメッセージを伝えるミュージカル仕立て。ミュージカル色は、それほど強くないと思うので、ミュージカル苦手な人でも大丈夫じゃないかなと思う…。しかし、もともと舞台で演じられていた作品だとのことで、この映画も、舞台みたいな作り方。

第一世界大戦の話だが、各国首脳の様子、軍の上層部の様子、市民達の様子、その代表として、スミスさん一家の様子、そして、戦地で戦っている兵士達の様子が、映し出される。特に、軍の上層部と、実際に戦っている戦地の兵士達との対比が、戦争の虚しさを強く伝えていた。

塹壕から呼びかけ合って、イギリスの兵士とドイツの兵士が、中立地帯で飲もうと言い合い、銃を置いて、それぞれ出てきて、一緒に飲み合うシーンが印象的だった。以前、イギリスにいたことのあるドイツ兵が、英語を話し、イギリスにいる彼女に、無事だと伝えてくれと、イギリス兵に頼んだり…。国の事情や、上層部の命令で、動いているだけの兵士達。国が違っても、同じ人間なんだと痛感させられた。

映画史に残るラストシーンだと思った。これまた、皮肉な表現になるけれども、まさに『素晴らしき』シーンで、グッと来た。美しくさえ見えてしまうあのシーンが、どれだけ哀しい悲劇を表現していることか。

ラストの十字架は、CGなどない時代なので、一本一本、手で立てられたのだそう。全部で、1万6千の十字架だとのこと。そんなに沢山の数の十字架を手で立てたのかと、映画製作の面では、感嘆するけれども、実際の十字架の数は、1万6千なんて、そんな少ない数じゃない。それを頭に描いて忘れないようにしないといけないと強く思う。
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