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ニュースの天才のsyuheiのレビュー・感想・評価

ニュースの天才(2003年製作の映画)
4.0
2003年のビリー・レイ監督作品。

1914年創刊の権威ある雑誌『The New Republic』で次々に特ダネを飛ばすスター記者スティーブンは他誌からも引っ張りだこ。ところが彼が尊敬する編集長がクビになったことで順調だった歯車が狂いだす。彼の記事の1つがネットメディア記者の目に留まる。「これは捏造ではないのか?」真実の行方は…?

失礼ながらヘイデン・クリステンセン主演作ということで全然期待しておらず、実際、彼の前半の演技の不自然さには本当にイライラさせられた。そんな彼がスター記者として周囲からチヤホヤされるわジャーナリスト志望の学生たちを前に講演するわでアホかと思いながら観てたら中盤から局面が激変する。

ネタバレになるのでこれ以上は書けないが、完全に予想を裏切る展開と結末で大満足の1本だった。できれば事前情報を一切入れず観たほうが楽しめるだろう。ヘイデン・クリステンセンのキャスティングは大正解で、一見正義の側にいるようで実は…というアナキン的存在感。EP2へのキャスティングは本作が理由かと思えるほど。

「記者を守るのがよい編集長だ」というくだりは『大統領の陰謀』の鬼編集長を彷彿とさせるが本筋はそういう話ではい。なんなら"真の主役"も違う。真相が明らかになるシークエンスは緊迫感もあり、感情に引きずられて判断を誤りかける人物の描写にもハラハラ。最後の1秒まで楽しめる記者モノの秀作だ。

1998年というインターネット普及初期という時代背景も面白い。まだまだジャーナリズムの世界は紙メディアがメインでありインターネット版は傍流。だがその傍流が主流のスター記者を鋭く刺す構図は象徴的。この事件から四半世紀後の現在、アメリカのジャーナリズムの主戦場はほぼネットに移っている。

揚げ足をとるようだが一部の字幕に誤りが見られた。たとえばスティーブが書いた記事のタイトル「モニカ 売る」というのはセリフから"Monica Sells"の訳だがこれは「モニカ(の名前のついた商品は)売れる」だと思う。冒頭にスティーブが取材していた展示会の話がここに繋がる。いやーおもろかった。

https://x.com/syuhei/status/1714300577692446821?s=20
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