psychedelia

めしのpsychedeliaのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
1.0
 成瀬巳喜男の映画を面白いと思ったことが一度もないのが自分でも驚き。
 専業主婦に疲れた主婦が自分の仕事を持とうと家出し, 社会の厳しさに直面して自分の甘さを痛感して帰ってくるという, それだけの物語に, 共働きが普通-どころか共働きしないと食っていけない若い世代の夫婦が多い今の時代に於いてわざわざ見る価値があるとは思えない。フェミニズムとか戦後社会生活史の研究とかには恰好の材料なのかもしれないが, 娯楽的・藝術的に現在に持て囃されるのは何故?
 こういう作品に対する評価でありがちな「夫婦の心の機微が描かれている」という呪文を信じない方が良いと思う。真実, ここにあるのは現状の夫婦とか男女の生活の風景画だけで, そこに存在するはずの価値観の相剋とか, 愛情と表裏一体の憎悪の関係とかは全く無視されている。夫婦とは何かという問題により鋭く切り込んだ作品が現代にはたくさんあって, 本谷有希子の『異類婚姻譚』を読んだ方がどれだけタメになるか分からない。
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