砂米

めしの砂米のネタバレレビュー・内容・結末

めし(1951年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

成瀬巳喜男の映画を4作観た中で一番好きだった。
唯一、主人公が本当の笑顔を見せて終わった映画だったからかもしれない。

『東京家族』の原節子さん。いつも笑顔を絶やさない菩薩のようなイメージがあったけど、そんな人がだいぶ苦労している物語だった。

笑顔の可愛いお洒落なさとこだったが、あそこまで行くと性格が悪いぞ。
養子で幼少期に何か思うところがあって、こういう性格になってしまったのか分からないけど何だかな。
妻の三千代の視点で見てるから夫の腕に抱き着いて「美千代さんってこわ~い」と笑ったり、三千代のいとこを好きになったことを「悪く思わないでね」と三千代が好意を抱いてることを分かっていて宣言したりする。腹が立った表現の「キィ~ッ!!」を初めて実感した気がした。

三千代の実家、村田家メンツがすごく良い。
3人とも性格が良くて、若夫婦が仲良しで幸せオーラが眩しい。温かい。
誰もさとこに言えないことをお婿さんの信三がビシッと言うのに驚き痺れた。
観ながら格好良すぎる…!お前が本当の男前だ!!!と口から洩れていた。
主人公の夫である初之輔は二枚目だけど、毅然とした態度で惑わされない信三の方が何十倍も格好良い。
可愛いからつい甘やかしてしまったり優しい物言いをしてしまうのは、本当の優しさじゃないんだなと理解した。

妹役の杉葉子さんも美人で溌溂と輝いてた。あまり計算が得意でなくても信三と一緒に頑張っていて微笑ましい。

そしてなんと杉村春子!『東京物語』では原節子の役柄に優しくなかったが今回は打って変わって慈愛に満ちた母親を演じていて感動。
やっぱり良い役もヒールも演じられる役者が一等格好良い。

ついカッとして、こんな夫と別れてしまった方が幸でだ…!と途中からずっと思っていたけどラストシーンの2人を見てたらそうじゃないんだなと。
よく考えれば初之輔は真面目なところが伺えるし。
夫の側に付き添い支えることが女の幸せなのではないか~というモノローグは価値観が古くて同意できないけど、三千代の笑顔が見れたので爽やかな気分になれる終わり方。
元いた場所に戻る電車なんだけど、新たな旅路って感じがした。

再会した2人が暑いからとビールを飲むシーン。三千代が苦いわ、と一口飲んで置いてしまうけど、その表情が幸せそうで素敵だった。
砂米

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