8Niagara8

めしの8Niagara8のレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
4.0
幸せ者だと周囲に持て囃され、三千代は気はそぞろ。自己を宙に浮かしたまま。
タイトルはよく言ったもので、碌な会話もなく、ご飯を作るばかり。
そこに押し掛ける里子の横暴なほどの悠々自適さと言ったら。それでもそこに妙な嫉妬心を覚えるわけで。周囲の人々の色合いをはっきりさせるに余りある濃い人物。
「感情をべたつかせて人様に迷惑をかける」ような配慮のなさにこっちまで辟易するわけだが、とはいえ三千代の問題の根本はそこではない。

物事を見透かす従兄弟に不幸な妻だと言われ、漸く自分の実相を突きつけられる。
贔屓目なしに物事を判断する良き母、歯に衣着せぬ物言いで実直さのある妹婿。
ある種東京、そして実家は今の自分のずれを可視化するに理想的な場所であった。

台詞だけでなく、映像も雄弁であり、悲壮感、現実を突き付ける。
幸福の本当の意味合いに気づいたような最後のモノローグ。ここは蛇足に思えるが、トータルで見れば普遍性に満ちた作品である。
8Niagara8

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