ゆいこ

めしのゆいこのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
3.9
倦怠期の夫婦がメインというのが「驟雨」とよく似ている。
姪っ子が遊びに来る所も同じ...だけれど、本作の姪・里子は自分が可愛いばかりの我儘で(確かに文句無しに可愛い)、悪気ないふうを装って、徐々に夫婦仲の溝を深くさせていく。
当人の居ない所で、三千代の夫である初之助に「三千代さん怖いわ...」なんて言ってしまうあたり、精神的に未熟であっても、女の嫌な所ばかりはちゃんと育っているんだなぁと妙に感心してしまった(笑)
「めし」という何気ないタイトルは、観終えた後では印象が変わる。
たったこの二文字に、夫に対して、今と将来の自身の生活に対してのやるせなさ、鬱憤...三千代の抱える感情が透けて見える気がしてくる。
三千代の気持ちの着地点がやや曖昧な所が少し気になったけれど、自分なりの幸せがどんなものか考えついただけでも大きな前進なんだろうなぁ。
成瀬監督の撮る原節子は、小津監督作品における、いかにも控えめで慎ましやかな淑女というイメージとは異なり、それがまた魅力的。
彼女に限らず、この頃のキャストは他の作品も観たいと感じる俳優ばかりで眼福。
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