キヲシ

めしのキヲシのネタバレレビュー・内容・結末

めし(1951年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

草臥れた靴、仏頂面の原節子、酔った上原謙、お調子者の大泉滉、子連れの中北千枝子…は憶えていた。並木座案件。職場の机に向かう上原の横移動にキュッキュッという音が重なり、新しい靴のアップ。上原と姪の島崎雪子にハラハラしつつ大阪見物。兜町、中之島、大阪城…東京に比べると戦災被害はマシだったのか。同窓会で幸せ者と羨ましがられて微妙な顔を見せる原。一方、バーで「美人の奥さん」を酒の肴にされる上原。倦怠期と貧乏。東京編での小林桂樹の説教炸裂が最高。優しい母の杉村春子、妹の杉葉子、居候を続ける姉の原節子。そこへ大阪でも勝手放題な姪の島崎が転がり込んで来る。女性たちとは少し離れた座卓から軽い口調で意見する商家の婿養子?の小林、姪の反論、嗜める原…布団を出そうとする杉村に「自分たちでやればいいんです!」と一喝。細かくカットを割り、カメラポジションを移動して最後は慌てて布団を敷く原の姿を隣の部屋から覗く。お見事。中北と原が見つめる夫婦らしきチンドン屋。逃げる原の前を塞ぐこども神輿。大阪へ戻る車中、寝惚ける上原と進行方向と逆向きの原の横顔、モノローグに重ねてじわりと寄っては離れるカメラ。「腹減った」しか言わない上原はおそらくそう変わらないが、諦観と覚悟、ささやかな幸せか。ラストは誰もいない移動ショット…。「もう君のことがわからない」と嘆く父(山村聡?)に「ごめんなさい」と謝りつつ欠伸する島崎…だよな、それでよし。
追記 お向かいの二号さんに三者三様の対応なのも面白い。
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