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めしのあのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
4.5
冒頭初之輔より先にお勝手場で猫に飯をあげたところは笑いましたが、ようはそういうことなのでしょう。寿司サムライみたいなものを出されてもただの観光産業にしか感じませんが、本作のような靴を脱ぐか脱がないかや猫の出入りで見せる夫婦の心理描写こそ、まさに等身大の普遍的な日本の映像表現を感じさせます。

大阪では三千代は初之輔と居間から一歩も出ないで飯を食べてましたが、東京に帰って河原で寛ぐカップルを見た後で、久しぶりに初之輔と外食する。土足で食べる飯は家の敷居を取っ払うわけですね。そういう日本らしい内と外の絶妙な描写で微妙な夫婦の距離感を描いた成瀬監督は、流石の巨匠です。
それなだけに、モノローグは邪魔でしたね...。

ラストに異議を唱えたくなる方はいるかも分かりませんが、いやいつまでも大阪行きが走る高架を背に一人河原を歩き続けられるほど強い人間がどれほどいるのかということです。あの未亡人ですら、子供に死なれたりしたら仕事だって手につかないでしょうしね。
いつまでも時代の型に囚われるしかできない凡庸な人間の哀しい縮図が同情を誘う映画でした。
あ