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めしのNNNのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
4.8
何という段差だらけの序盤。

まず、家の前の路地から通りへと上がるところの階段。地形的なインパクトもさることながら、人が引っかかって転んだり、出勤する夫に妻が荷物を手渡す場所しても使われる。

次に、台所と茶の間のあいだの段差。めしの支度ができると、盆に茶碗を乗せ、スッと段差を越えていく原節子。ちゃぶ台を拭き、食器を手に取り、並べていく。汁物ができると、再び台所に戻り、鍋をつかみ、段差を越えていく。そのテキパキとした身のこなし・ショットのリズムは只事ではない。

少し話が進むと、二階のベランダと部屋のあいだ、玄関と茶の間のあいだにも段差を発見する。

などなど。

結婚問題で家出してきたらしい姪の島崎雪子の上原謙へのべったり具合がいささか過剰に映る。おじさんと呼ばず、下の名前にさん付けする態度もまた。

向かいの男と島崎雪子が大阪観光をするときに一瞬入る縦のショット(主観?)。あとは終盤、原節子が手紙をポストに投函しようとし思いとどまるシーンでの行って帰ってくるフォローショットなど、「こういうのが成瀬だっけ」と思うような移動ショットがいくつかあったことを記憶に留めておきたい。成瀬作品を観るのがあまりに久しぶりなため「成瀬っぽさ」が頭からすっぽり抜け落ちている。

映画はすこぶる面白かった。
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