ハレンチ学園在学生

めしのハレンチ学園在学生のネタバレレビュー・内容・結末

めし(1951年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

51年東宝。林芙美子原作を成瀬巳喜男を初めて映像化したことで知られる。ずいぶん久しぶりに見たが、大阪が舞台になっていたことは忘れていた。原節子の顔を見ると腹が減る上原謙。この夫婦は倦怠期を迎えている。そこへ上原の姪の島崎雪子が付き合っている男への不満がもとで訪ねてくるのは56年の「驟雨」と同じ構図だ。「驟雨」がユーモアを基調にしているのに比べて本作はシリアスさが勝る。島崎が叔父である上原を恋愛対象に考えていると知り不機嫌になる原の不穏さ。あるいは原の従兄弟にあたる二本柳寛が原に思いを寄せている怪しさ。また原が実家の矢向で再会した旧知の中北千枝子を戦争未亡人と知り女手一つで息子を育てる姿を見て感じる女の生活の不安定さ。嫉妬、困惑、憐憫、諦念などの感情の機微を原節子が見事に表現していて素晴らしい。原の実家の面々、杉村春子の母、弟の小林桂樹(大映専属で本作を機に東宝に移る)、小林の嫁の杉葉子の、わずかなシークエンスながらも際立つ存在感も見もの。そしてわがままなお嬢様役の島崎雪子の傍若無人さも印象に残る。島崎が好いた男の懐具合を言う「スリラー的経済」というフレーズには笑った。ラスト、矢向から上原と2人大阪に戻る汽車の中で原が「大海の荒波を泳ぐ男の横にいることが女の幸福かもしれない」と思うのは時代というほかないのだろう。