ヒノモト

野火のヒノモトのレビュー・感想・評価

野火(1959年製作の映画)
3.8
連続投稿失礼します。

続いて、1959年の市川崑監督作。
こちらは初見でした。
大筋の物語展開は、小説に準じたもののようで、塚本監督作とほぼ同様で、同じシーンも数多くありますが、建物などのセットはともかく、ロケーションとしてはさすがにフィリピンには見えにくい感じでした。

映像自体は素晴らしいのですが、劇伴のオーケストラ的で時代的に仕方のないところではあるのでしょうが、大げさすぎて映画の空気感に全く合っていないし、出来ればミュートしたいくらい鑑賞の邪魔でした。

モノクロだからこそ、グロさも軽減できているところもありつつ、技術的に至らないところはカメラが上手く配置されていて、想像の余地を残した演出になっています。

ラストはタイトルの「野火」が示すところに忠実で、戦場の孤独から、それが敵だと分かっていても、人の温かさに触れたいと願う気持ちを表しているのかと感じました。

主演の船越英二さん(船越英一郎さんの父)は、この頃は日本人離れした顔立ちだったんですね。

同じ題材の作品ではありますが、若干戦争に対する距離感が違っていて、罪を背負ったまま生き続けることへの後ろめたさや、兵士から人間に戻る境目が描かれていて、戦争を否定的に捉えるか、体験者のリアルとして捉えるか、時代の見え方の差になっていて、見比べるのも有意義な時間でした。
ヒノモト

ヒノモト