磯野マグロ

手をつなぐ子等の磯野マグロのレビュー・感想・評価

手をつなぐ子等(1948年製作の映画)
3.8
【善意のかたまり】172

「忘れられた子等」でも「ぼくはずいぶん待ったよ」と言ってた笠智衆ですが、前作にあたるこの映画でも、ひたすらに子どもを待ちます。どこの学校でも上手くいかなかった寛太のことも、乱暴者の山金のことも。
とくに、みんながいろいろ言っても山金を信じて待てるのはすごい。そして見てないようですごくよく見ている。「彼は最近、いじめていても楽しそうじゃないんだよ」とか。いまどきそんなこと言って待ってたら問題になりそうですが、舞台は戦前。いまとはだいぶ違います。明確にちがうのは、学校が「軍人養成機関」と認識されているところ。そのあたりはけっこうはっきりしてます。
そんな厳しいところもありますが、寛太はご両親に愛情いっぱいにそだてられ(時代背景からすると、けっこう珍しいことではないかしら)、素直に育ってます。同じ父親稼業やってる身として、あのお父さんは偉い。たぶん明治生まれなのに、息子にも妻にもものすごく紳士で真摯です。友達の奥村くんもとてもいいやつだったなあ。
寛太は、和菓子職人になるといいんじゃないかな、というのがわたしの勝手なアドバイス(みんなそう思ってるってば)。
磯野マグロ

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