りょう

スイミング・プールのりょうのレビュー・感想・評価

スイミング・プール(2003年製作の映画)
3.6
 フランソワ・オゾン監督は、2000年の「焼け石に水」を最初に観て、それまで経験したことのない不思議な作風に戸惑いましたが、「これから評価される才能だろう」と思った記憶があります。
 この作品は、性的な描写が彼らしいという印象ながらも、終盤までの展開がオーソドックスなので、とても大衆的だと思っていましたが、ラストシーンが謎めきすぎてかなり混乱しました。ちゃんと謎解きしようと思いつつ、例によってそのまま放置されていた作品です。
 あらためて観てみると、現代的な価値観では女性の描写に引っかかるところがありますが、やっぱりフィルムの映像が新鮮です。肝心の謎解きですが、結局は観るひとの解釈次第だろうと思いました。個人的には、すべてがサラの妄想だったとすれば、若干強引ながらも辻褄があうのかもしれませんが、さすがにそれではすべての描写の価値を否定しかねないので、ジュリーもジュリアもジョンの〇違いの娘として実在していて…というのが妥当だろうと思います。当然に一部に架空の描写もあるはずですが、どことどこがというところまでになると、もう1回観ないとわかりません。
 サラが作家で新作を執筆中というシチュエーションは、現実と創作の境界を曖昧にさせる効果として抜群です。この作品では、フランスとイギリスをつなぐ電話のシーンがヒントになりそうですが、ほとんどのことが携帯電話で解決できてしまう現代では、とりわけサスペンス映画の発想にも苦労するのでしょう。
 何かと謎解きに意識が向いてしまいますが、全体の演出や映像などのクオリティも確保された佳作だと思います。
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