カタパルトスープレックス

スター80のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

スター80(1983年製作の映画)
3.7
ボブ・フォッシー監督の遺作で選んだ題材がプレイメイトのドロシー・ストラットンがヒモ的な夫ポール・スナイダーに殺された殺人事件。プレイボーイ版『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ですが、こちらは史実に忠実。

ボブ・フォッシー監督はとにかくキャラクター造形がすごいですよね。『スイート・チャリティー』(1969年)のシャーリー・マクレーン、『キャバレー』(1972年)のライザ・ミネリ、『レニー・ブルース』(1975年)のダスティン・ホフマン、『オール・ザット・ジャズ』(1979年)のロイ・シュナイダー。全部キャラだ立ちまくってて格好いい!

本作の場合はヒモで夫で20歳のドロシー・ストラットン(マリエル・ヘミングウェイ)を激しい嫉妬のために殺してしまうクズ男のポール・スナイダーが題材なので、これまでの作品より難易度が高い。ボブ・フォッシー監督はエリック・ロバーツを中身が無いのにプライドが高いナルシシストをとても妖しく作り上げます。たしかに見た目はいいのだけど、ヒョロっとしてキモい。そして、その対照的な存在となるドロシー・ストラットンをセクシーなのに無垢に描く。

ストーリー的には事件後のインタビューを所々にはさんだりして、なかなか凝った作りになっています。自信満々だったスナイダーが徐々に自分を失っていくのもよく描けている。

ただ、全盛期の作品群と比べると突出した部分はないんですよねえ。ショーや音楽の演出も必要最低限だし。舞台監督でもあったボブ・フォッシーの魅力って舞台的な演出だと思うんですよね。それが本作にはない。

十分に一度は観るべき魅力を備えた作品ですが、過去作品があまりにも良くて、眩しすぎて。