櫻イミト

L・B・ジョーンズの解放の櫻イミトのレビュー・感想・評価

L・B・ジョーンズの解放(1969年製作の映画)
3.5
「ローマの休日」(1953)「ベン・ハー」(1959)「コレクター」(1965)等々の巨匠、W・ワイラー監督の最後の作品。日本ではATG配給で1973年公開。原題は「L・B・ジョーンズの解放運動」。

黒人蔑視の風潮が根強いアメリカ南部テネシー州を舞台に、葬儀屋社長の黒人ジョーンズ、悪徳警官、弁護士の間で起こった悲劇を描く群像劇。

公開当時のキネマ旬報で「アンチ・ニューシネマの滋味」と題する記事が挙がっていた。言い得て妙で、観る者自身に問題を問う骨太な社会派映画だった。演出は巨匠ならではの巧みなものであっという間に引き込まれた。ただしラストは、昨今の映画ならこれからがクライマックスというところで終わるので、やるせない気分が残る。逆に言えばリアルな問題提起とも言える。

本作の公開後、「黒いジャガー」(1971)「スウィート・スウィートバック」(1971)を皮切りにブラックスプロイテーション映画が始まる。そのブームの先駆けとなった一本。
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