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ブギーナイツのtntnのレビュー・感想・評価

ブギーナイツ(1997年製作の映画)
5.0
再鑑賞 というか初見ぶり。
中学の頃ケーブルテレビで初めて見た時の衝撃と感動は本当に忘れられない。
今見ると、特に前半は全シーン全カットにカメラワークとサントラが敷き詰められている。才気走ったという表現がここまで似つかわしいのも珍しい。
亜流や紛い物に感動し、自分だけは特別だと思い込んでしまう、どうしようも無い奴ら(劇中の言葉を借りるならfuckin' idiot)が、fucked-up situationに追い詰められ、破綻を迎える様をジリジリとロングテイクで描く。この粘り強さは、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』にも受け継がれている。
圧巻なのは、ジャンキーの家に重曹を売りつけるシーン。あまりに状況が張り詰めてて最早笑えてくる。
1970〜90年代の影のアメリカ史とも言えるが、後年に顕著な巨視的な立場はまだ薄く、あくまでも人間ドラマに留まる。いや、例え石油王の破滅や新興宗教の誕生を描くにしたって、結局は人間達(主に男)が顔を突き合わせていただけだった。そこでは必ずカメラがゆっくりと対象に近づいていく。まるで時間の進行が遅れているように。
しかし、P.T.Aは同じくらいカメラを流麗にも動かす。スケーター・ガールの軽やかな動きはもちろんのこと、何度もホーナー監督の邸宅やナイトクラブをカメラは動き回る。そこでは、あいも変わらずidiot達が、後先のことなんか考えずに、踊ったり酒飲んだりセックスしたりしている。こうした人間達が破滅するか生き延びるかはほとんど偶然でしかない。
最後のシークエンスと長回し。散々醜い姿を見せつけたダーク・ディグラーやアンバーは鏡に再び向き合う。fucked-up situationの顛末が偶然でしかないのなら、つまるところ自分で幸せを見つけるしかない。人生の味わいは、ダーク・ディグラーの控室みたいな場所にあるのかもしれない。
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