森田芳光監督特集第11回目
上田正樹の代表曲「悲しい色やね」をモチーフにした小林信彦の小説を森田芳光が映画化。主演は仲村トオル、高嶋政宏、藤谷美和子などなど
森田芳光版Vシネマとでもいうべきか、東映がもともとVシネマなどでも有名な会社だからこそ、成立した作品なのかもしれない。
いつもよりかは、ぶっ飛んだ演出などは抑えめになっていて、今見ると普通のVシネヤクザ映画になっているのがちょっと影が薄くなってしまっているような気がする。良くも悪くもない。
森田演出もかなり出ているが、サムペキンパーに似た殴られたり撃たれた瞬間にスローモーションになるというものであった。これと同じような撮影方法をジョンウーとかが後年やっていて、2000年代の邦画でも主流になっていくため、特別森田さんらしい独特の演出とは思えなかった。
今回は、ほとんど遊び演出はなく、せいぜいカジノぐらいだがあそこはヤクザ映画に上手くはまっていたため、あんまり森田監督らしい演出とは感じられなかった。
全体的には、初期の噂のストリッパーとかピンクカットぽいアングラの下町感を出したような作品であった。日活から東映に代わっただけである。
しかし、ビーバップハイスクールなどで存在感を出していた仲村トオルは流石イケメンである。クールで常に落ち着いてそしてここぞというときには喧嘩が強い頼りがいのある伊達男であった。
高嶋政宏もワイルドな顔が光っていて、クールな仲村トオルと良い対比になっている。
中盤の喧嘩シーンは、二人だからちゃんとできていたけど、ちょっと暴力映画にしては物足りない演出だったかな。
全体的にも、別段驚くところもないけど、もうちょっと暴力描写をこの頃磨いていたら、他のジャンルも上手くできたのではないのかなと嘆くのであった。
劇中にかかる悲しい色やねはやっぱり名曲やね。