Automne

愛の記念にのAutomneのレビュー・感想・評価

愛の記念に(1983年製作の映画)
3.9
父、母、兄との関係性の絶妙さ。父性が家庭から失われてからの崩れ加減とか、ここではないどこかを探し、死にたくなったり逆に”生きている実感”を手に入れたくなってセックスに耽溺してゆく。それでも行為が終われば虚しさが残り、綺麗だった瞳はいつのまにか曇ってゆく。
理解のされなさ、血のつながりはあるのに絆としてのつながりがないいびつな状態の見せかたが素晴らしかった。
抽象度が高く難解な分、そのあたりの虚無感とかを感じたことある人のほうが響きそう。人間ってみんな嘘で全部つまらないし死にたいし、いつか綺麗だったころの自分はもう取り戻せないのにどこかへ向かって何かを探している。
ふと我に返って大人になり、でも大人は思っていた大人と違ってポジティブでもネガティブでもなく諦めに近いような。
終盤のバスの中での父と娘の会話がじんわりと響いた。
それらのあいまいなものへ向けて作られたメッセージにはたしかに見る価値がある。大衆性や分かりやすさはないので分からない人には全然分からないところもフランス映画らしくてかわいい。秀作です。
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