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獣人島のmasatのネタバレレビュー・内容・結末

獣人島(1932年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

こんな僻地に、またもカーツが出現!?

怪しい場所への冒険。
後にニ回も(何故か名優たちに)リメイクされる事になる面白さが、よく解った。

野蛮な船長のキャラクターも腑に落ちながら、そいつのせいで島流しとなった主人公。もともと、沈没事故の漂流者。彼が目を覚ました貨物船、船内にはジャングルの様な動物の声が響き渡っている。
主人公が徐々に“その世界”に引き込まれていく過程が素晴らしい。

その世界とは、銅鑼の音色と鞭の音を響かせるカーツ(勿論モロー博士)が支配する帝国だった。人間界(ロンドン)を追われた天才が流刑島のような場所で虎視眈々と自らの心に渦巻くテンペスト(怒りの嵐)を操りながら、神への冒涜、その領域を犯す(フランケンシュタイン)実験を遂行しようとしていた。

その実態を目撃する訳だが、30年代なので、精神的倒錯性は溢れているが、主人公の正義感、モロー博士の助手の寝返り含め、異様な事態には至っていない。ある種のハッピーエンドを迎える事となる。

しかし、その後の倒錯的映画に影響を与える事十分で、時代の混乱、精神風土が都度加味され、より現代的な異様な映画が以後生まれていく事になった。
病的な精神性が、軸になっていくのである。

チャールズ・ロートンは、その巨漢を白い麻のスーツに包み、マーロン“カーツ”ブランド真っ青なカリスマ性を放つ。
しかし、ロートン以上に、あの魔神ドラキュラたるベラ・ルゴシの獣人リーダー役が、異様。ドラキュラの麗しい艶悪以来、『モルグ街の殺人』(32)や『狼男』(41)のジプシー、『死体を売る男』(45)など、醜いサブキャストでも光るが、本作は究極。獣人リーダー役を、以後、名優が演じる事になる原点の迫力を観た。

豹の人間化した女ロトも、妖しさ満点で見所。人間の男にムラムラする獣性を、飽く迄もエレガントに演じる。彼女には「数パーセントの獣が残っていた」と助手が言う様に、その数パーセントで、主人公は引いてしまうのである。しかし、初めて涙を流すロトは、実に可憐だった。

モロー博士がロンドンを追われる事になった発端を、“実験していた犬が逃げて、人々の目に晒された”と説明していた。おそらくその犬とは『SFボディ・スナッチャー』(79)で登場した“人間犬”なのではないか?いや、そんな造形だったのではないかと察する。当時としては、モロー博士に如何に恐れ慄いたかが伺われる説明だった。
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