人類ほかほか計画

獣人島の人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

獣人島(1932年製作の映画)
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ものすごいまがまがしさ。
怪奇の極北。
直接的ショックシーンやゴア表現も、ジャンプスケア演出ももちろんないし、音楽による煽りとかもない、怪談的な物語の怖さとも違う、「恐」や「怖」というよりまさに「怪」であり「奇」。
フランケンシュタインの怪物のようなグロテスクなビジュアルってほどでもない、ちょっと毛深すぎる人かなくらいの見た目の獣人たちで、こんなおぞましい映画になるなんて。

監督アールCケントン、この人のフィルモグラフィを見ると後にフランケンシュタインシリーズに生体脳移植ネタを持ち込んでる。この人はやばいかもしれない……。

時代を超越するチャールズロートンの天才的演技。1932年の映画であんな発声で演技した人他にいるのか……? 直前のハリウッドデビュー作『魔の家』での演技はめちゃくちゃ舞台的でウザかったのにすぐ変えてきて映画の演技を掴んでる。

全く顔がわからない毛むくじゃら特殊メイクで、もはや目力だけの勝負に果敢に挑む偉大なるルゴシ。(まだ落ち目俳優と呼ばれるような時期ではない、『魔人ドラキュラ』の翌年なのだけど、『フランケンシュタイン』への出演を蹴ったがためボリスカーロフが特殊メイクの下の演技でルゴシ以上のスターになっちゃって、おそらくその反省やら対抗意識による出演……)

パンサーウーマンとクレジットされるロタを演じるキャスリーンバークのお人形さん顔と元祖ケモナー的フェティシズム。

駒井哲が演じる忠犬獣人ムリングの自己犠牲。

獣人たちの反乱は後の『猿の惑星征服』のような映画に繋がっていくと共に、人であって人でない群れが襲いくるというイメージとしてはロメロ以降のゾンビにも通じる。

『サンライズ』『ジキル博士とハイド氏(1931)』『蝿男の恐怖』『ライムライト』『チャップリンの独裁者』のカールストラスによる陰影バキバキ&カメラワークも自在な撮影。
美術のクオリティも高く迷宮のような島のセット。
ドクターノオもブロフェルドもこれが原点と言えるか。
仮面ライダーの怪人のイメージもここをまず通過してるのではないか。

昔の映画あるあるとは言えあまりにもすぐ人を殴る主人公が完全に災難の元になってて典型的すぎる。