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怪獣ウランのhorahukiのレビュー・感想・評価

怪獣ウラン(1956年製作の映画)
3.6
放射能を食らう「怪獣」の恐怖!!
陸軍訓練場にて突如地面に亀裂が入った。ガイガーカウンターが異常な放射能数値を示し、その日から訓練場近辺で大火傷により死傷する者が出始める。そして被害者の出る場所には決まって無害化した放射性物質が残されている。一体何が起こっているのか…。

ハマーフィルムによるSFホラー。
ハマー産SFホラーとして有名なquatermassシリーズ一作目である『原子人間』の大ヒットに気を良くした製作のマイケルカレラスがSFホラーの第二弾として制作した怪獣映画。脚本はジミーサングスター。ちなみに本作が初の長編脚本です。

そんで怪獣と言ってもゴジラやガメラのようなものとは違い、スライム状の物体です。しかもウランっていう名前ではなく原題でも作中でも「X」と呼ばれてました。

同種の不定形モンスターが登場する映画は前述の『原子人間』の他にも『マックィーンの絶対の危機』、『カルティキ/悪魔の人喰い生物』が有名ですが、他にも多くの映画が作られています。本作は恐らく『ゴジラ』から多大な影響を受けている反核映画であり、後の『ゴジラ』シリーズや『ガメラ』シリーズに対して影響を与えた映画でもあるのではないかと思いました。

というのも、本作の怪獣「X」は地球が地中奥深くに溜め込んだエネルギーが時間とともに進化して知能を持ったものであり、放射能をエサとするのです。放射能を求めて地表を歩き、放射能を取り込むことで対象を無害化し、次の放射性物質を目指す。自身も強い放射能を放っているため近くにいた人間は被爆してしまうのですが、「X」の行動それ自体は果たして悪なのか。核という絶対悪を排除しようとする「X」の進行は地球自身による浄化作用なのではないかと考えられるわけです。

同じく核の脅威を根底に置き、人類に対する自然環境からの反撃を描いた『ゴジラ』に対し、本作は地球による「核の浄化」を描いているわけです。そう考えると「X」は地球にとっての守護神であり、それは平成ガメラシリーズにも受け継がれているのではないかと感じました。

また、モンスター映画においてはモンスターが現れるまでの「危機感の高め方」というのが1つ重要な見どころになっていると思います。本作では残念ながらモンスターの登場はクライマックスまで待たないといけないのですが、何でもない日常から少しずつ逸脱していく冒頭の演出は、徐々に異変を感じさせるだけでなく適度な息抜きで緩急をつけたものになっており、地味ながらも丁寧なものでモンスター映画好きであればワクワクするものとなっていると思います。

他にも、夜にひとり生い茂った森の中を歩く少年を追いかけるようにトラッキングしていたカメラが、ショックシーンをきっかけにモンスターの目へと変貌し、逃げる少年を捉えるのも面白く感じました。あと骨を残して人の顔が溶け落ちるショックシーンだけがそれまでの地味な作風から浮いてるため、衝撃が強調されていたのも良いアクセントになっていたと思います。

そういえば、『マックィーンの絶対の危機』の2回目のリメイク作が製作中だという話を前に聞いたように思うのですが、どうなってんのかな。
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