河

カンフー・マスター!の河のレビュー・感想・評価

カンフー・マスター!(1987年製作の映画)
4.0
恋愛する時期が終わりつつある人と、始まりつつある人の間の恋愛の話。カンフーマスターというゲームがあり、上の階に捕われた姫として母がいて、それを救い出すカンフーマスターとして少年がいる。その恋愛は自然に反するものとされ、社会的に大きなコストを伴う。それが同性愛とエイズに重ね合わされ、それを跳ね返すように、少年によってエイズのチラシがメッセージボトルとして海に投げられる。ただ、少年はヒトラーに同化していて、そういった存在を排除する側にいる、もしくはなっていくような感覚がある。さらにそのヒトラーがサッチャーと重ね合わされる。ゲームでは姫を救い出した後、その幸せは続かずまた姫は捕らえられる。少年はそのゲームのハッピーエンドの先の結末も自分の頼んだ連絡が届いたかも見届けず、救ったつもりになってその恋愛を武勇伝として男性的、強者生存的な社会に適合していく。母は庭の手入れもしなくなり、家と共にその両親に同化していく。逸脱していた2人が、それぞれの社会的な役割を再生産するような形に着地して終わる。
カンフーマスターっていうゲームと10代と40代の恋愛っていう設定を通して、当時の競争社会化やエイズ、それによる同性愛への風向きやそこから排除されてしまう人、新しい世代と古い世代、男女の構造的な住み分け、さらに捕われの姫とそれを救うナチスからレバノンのフランス人勾留について、競争社会を比喩的かつ多面的に、結論を出さずに見せているような感覚の映画。主題的には君の名前で僕を呼んでにかなり近い作品のように感じた。
河