まーしー

八日目の蝉のまーしーのネタバレレビュー・内容・結末

八日目の蝉(2011年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

不倫相手の子どもを誘拐した女性の逃避行を描いた人間ドラマ。
“優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした”

不倫相手との子どもを堕ろしたことで、不妊の体となった希和子(永作博美)。
その希和子に娘として育てられた薫(井上真央)。
希和子は母であり、薫は娘だったのか——その問いを投げかける2時間30分。

「誘拐」は、法的にも倫理的にも許されない、立派な犯罪行為。
でも、希和子に誘拐されながらも、たくさんの愛情を注がれ育てられた薫は、すごく幸せな4年間を過ごしたように思う。
薫が希和子へ話したセリフが忘れられない。
「ママ(希和子)と結婚する!ずっと一緒にいる!」
4歳の子どもらしい、純粋な気持ち。胸に刺さった。

逃避行を続ける希和子と薫が、警察に取り囲まれたフェリー乗り場のシーン。
警察に向かって最初に発した希和子の言葉が、薫への想いを物語っている。
「その子は、まだご飯を食べていません……よろしくお願いします」
薫の食事を真っ先に案じた希和子は、本当の母親だったのだろう。たとえ血の繋がりがなかったとしても。

地上で七日間しか生きることのできない蝉。
八日目まで生きた蝉は、周りに誰もいないという孤独を味わうのだろうか。
それとも、誰も知らない景色を見て特別な思いを抱くのだろうか。
特殊な環境で過ごした希和子と薫。二人は、果たしてどちらの蝉だろう。

涙なくして鑑賞できない本作。「母性」とは何かを考えさせられる。
フェリー乗り場のシーンは何度も見返して、その度に泣いた。おかげで翌朝は目が腫れていた。