ダイナ

イレイザーヘッドのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

5人という少人数チームで制作されたデヴィット・リンチ作品。主演ジャック・ナンスの強烈なビジュアル(というか髪型)が印象深いです。ほぼほぼの作業をリンチが担当しているというのが驚きですが、もっと驚くべきはシュールを極めた内容。各自登場人物の会話レスポンスが独特なスロウテンポ、奇怪な現象が度々発生し、喜楽が感じられない終末感漂う異質な世界観。低予算といえどグロテスク表現は正直そこらのバイオレンスアクションとかホラーとかスリラーより群を抜いている印象を自分は受けていて、胎児の臓器に鋏を突きつけるシーンは作り物と分かっていてもショッキングでした。

モノクロのシュールさに「アンダルシアの犬」のような雰囲気を感じます。流石にあっちの本筋すら提示されてない夢の複合作品よりかはある程度脚本で導いてくれてはいますがそれでも難解。非現実的な現象(チキンとか胎児とか)に対するキャラのリアクションの薄さにはそういう世界観だからと片づけられますが、それらがメタファーとして置き換えられているのではと考えたりもします。胎児という存在に重きを置くと色々な要素にアタリをつけやすくなるような気がしまして、例えばヒョロヒョロっとした紐みたいなのはまんま精子でチキンのくだりは出産、おたふく女(ラジエーターガールと呼ばれているらしい)が上から降ってくる謎の生命体(前述した精子)を避ける場面は受精〜着床を表現しているようにも感じます。鉛筆消しゴムを見た時に「ERASER HEADってそういうことか!」とスッキリしましたがつまりどういうことなのか。子供という存在が親へ重荷となり不安が増長するというストーリーに消しゴム頭という要素がどういう効果を持っていたのかは理解できず。そもそも受精とか書いたけど女は避けて踏み潰してるじゃないかとか惑星のおっさんとか考えても埋まらない空白が大きすぎてリンチの解説が欲しいのが本音。

リンチの当時の生活風景(女とのやり取り)を反映したのが本作ということで低予算ながら周囲からの圧力を受けずに製作できた本作を傑作と自負されているとのことなので、彼の言葉を信じるならば本作はなあなあに誤魔化した・売れ線のためにねじ込んだ描写は無くリンチの心境を完璧に表現しているのでしょう。知識を蓄えて再鑑賞したいです。
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